お風呂が血流を上げるメカニズム
お風呂が血流を上げるメカニズム
まずはお風呂の温熱による自律神経への刺激によるものです。これはぬるめのお湯と熱めのお湯(42℃ぐらいが増目)では、違ったメカニズムにより発生します。まずは熱めのお湯に入ると、身体は「熱い」ということで緊張(温熱刺激)し、その状態に対抗しようとして軽い闘争モードへと導かれます。「闘い」ですから筋肉にエネルギーの原料と酸素を含んだ血液を送りこむべく、心拍数は上がり、一時的に血流は上がります。逆にぬるめのお湯では、身体はリラックスモードへと導かれます。自律神経の作用により、血管内皮細胞という血管の内側にある細胞から「一酸化窒素(NO)」という物質が産生されます。この一酸化窒素には、血管を強力に拡げる作用があり、それによって末端まで多くの血液が届けられることになります。以上のような温熱作用による2つの異なるメカニズム、あるいはそのミックスによって、体内の血の巡り、すなわち血液循環がよくなっていきます。
さらに血流トップには、お風呂の物理的な作用も関係してきます。それは「静水圧作用」です。静水圧作用とは、文字通り浴槽に入ったお湯の重さの圧力が全身にかがかることです。その重さは意外なほどあり、1mの水深で1平方cm当たり100gの水圧です。つまり、身長170m・体重60kgの人の場合の首から下の体表面積から計算すると、なんと全身に約600kgの水圧がかかっている計算となります。実際一に首まで湯に浸かった状態でメジャーを使って腹周りを測ると、空気中に比べて3〜5cmほども縮むほどです。
この静水圧作用によって血液循環がよくなるしくみは、大きく2つあります。
1つめは「静水圧による静脈還流量の増加」です。体表にある皮膚には血管が多く存在しますが、そこに直接、このお湯の水圧がかかってきます。それにより、まずは血流が心臓の方向に押し戻される現象が起こります。特に老廃物を回収して心臓方向に戻る静脈血は、心臓のポンプで押し出される動脈血に比較して血流が悪く、脚部の静脈などは重カによってさらに戻る力が弱まります。静水圧の作用により、これらの静脈血が心臓に押し戻され(=静脈還流)、その増えた血液がさらに循環させるために全体的な血流がよくなります。
また湯上がり時には、2つめの「静水圧のマッサージ的効果」が期待できます。ここで、水が流れるホースを何秒か足で踏みつけた後、足を離すと中の水はどうなるか、を想像してみてください。当然、水は踏んでいる場所で流れが悪くなり一旦溜められたような状態になって、足を離したとき、(足の重さの圧が無くなった時)に、勢い良く流れ出すと思います。お風呂に入った時も、体内の血流に似たような現象が起きます。つまり押さえられていた体表の血管が浴槽から上がった途端に開放され、血が勢い良く流れ出すのです。これはすなわち「マッサージ」と同じ効果であり、先ほどの静脈還流効果と相まって、血液循環を上げてくれます。
血流が上がればほとんどのことは解決する
さて、血液が生命と健康維持に重要な物質を全身に届けていることは、本項の冒頭で述べた通りです。お風呂によって血流がよくなれば、血液が運んでいる栄養素・酸素・ホルモンなどに加え、体表で温められる熱も全身の隅々まで運ばれていきます。細胞に栄養素と酸素が行き届くことで、新陳代謝が活発になります。酸素はエネルキーえ燃焼に必須なものですから、健康的なダイエットにも繋がっていきます。またホルモンは、各細胞に生理活動を命令する物質です。例えば女性らしい美しい肌やクビレ体型を司る「女性ホルモン」が全身の細胞に届けられると、インナービューティへの貢献が大きくなります。
同時に体にたまっていた老廃物がデトックスされます。例えば、肩凝りの主要な原因は、僧帽筋なとの肩・首周りの骨格筋の緊張によるものです。お風呂に浸かることで血流が上がって筋肉の緊張が和らぎ、溜まった乳酸などの老廃物や痛み物質が代謝されることで、凝りや痛みが改善します。慢性の腰痛や関節痛も同様のメカニズムにより、症状の緩和が期待できるでしょう。さらに利尿作用が促進されますので、女性の悩みであるむくみにも好影響です。
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