銭湯の始まり

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銭湯の始まり

寺院や僧侶たちによる入浴啓蒙事業が行われる中、その良さが伝わっていた人々から施浴への要望が高まっていったと思われます。一方で、奈良時代に始まった荘園制度(私有農地)の崩壊が中世に入って始まり、かつて裕福だった寺院の財政も苦しくなるところが出てきました。そういった流れの中、今までは無料で開放されていた施浴に料金を課したことが、銭湯の始まりの一つだと考えられています。先に紹介した東大寺でも、「浄財」という名目で一般庶民に湯屋の使用を許可した記録が残っているため、東大寺大湯屋は「現存するもっとも古い銭湯」という見方もあります。

また寺院とは別に、公卿や武士、その他の裕福な個人の家では、入浴施設を有するようになっていました。人を招いて茶の湯やご馳走、お酒などをふるまいましたが、そのこと自体を「風呂ふるまい」と呼ぶことがありました。その理由はお風呂に入ってもらったあとに、宴を催すことが多かったからです。ちなみに、公卿の間では、裕福でお風呂がある家に「もらい湯」へ行った際、湯銭代わりに薪木を持ち寄ることを「合米風呂」と呼んでいました。

このような流れから、寺院の浴堂ではない場所に入浴施設を持って商売をするケースが出てきました。また寺院の施浴では、入浴に際しての堅苦しい規則があり、場合によっては遠くまで足を運ぶ必要もあったので、そのような町湯が歓迎されたのです。これが銭湯のルーツの一つといえるでしょう。

銭湯と思われる古い記録としては、ともに平安時代の公卿による日記である「永昌記」(1110年)、「中右記」(1129年)の両書に、京の中心部の一条に「湯屋」と称する商業施設があったことが記されています。

鎌倉時代には高僧の日蓮が書いたとされる「日蓮御書録」(1266年)には、「御弟どもには常に不便の由有ベし。常に湯銭ざうりのあたひなんど心あるべし。」とあります。日蓮が弟子たちの入浴料や草履代を気にしていることから、この頃には銭湯のようなものが存在し、そこに行くことが僧の日常で重要なことであったことが伺われます。さらに京都の八坂神社の記録書「祇園執行日記」(1321〜1326年)では「岩愛寺で銭湯風呂の事、今年よりこれを正月に立て始める。元享年中か、雲居寺寺領で銭湯あり。ニ日、岩愛寺で銭湯風呂のこと、社領内の上の者のためにあり。」と、寺院において営業された銭湯という文字がはっきりと見え始めます。このような銭湯形式の入浴文化は、先に紹介した熱気浴や蒸気浴などの「和のサウナ」と同様、日本の中心であった関西地方以西に多く見受けられました。


銭湯が無かった江戸で急激な成長を迷げる

関東における初の銭湯とされるものは、江戸開府直前の1591年、日本橋近くの銭瓶橋の袂に、伊勢国から江戸に移った伊勢与一によって開かれたものとされています。その形式は、郷里お得意の伊勢風呂と同様の蒸気浴であったと考えられています。1641年頃書かれたと思われる「慶長見聞録」には、この江戸初の銭湯が始まった後、急速に江戸市中に広まっていったことが、わかりやすく書かれています。

「天正十九年の夏頃かと、伊勢与市といいしもの、銭瓶橋のほとりに、せんとう風呂一つ立つる。風呂銭は一永楽銭なり。皆、めづらしき物かなと入り給ひぬ。されども、その頃は、風呂ふたんれんの人あまたにて、あつあつの雫や、鼻がつまりて物もいはれず、煙にて目もあかれぬといひて、小風呂の口に立ちふさがぬる。風呂をこのみしが、今は、町ごとに風呂あり。びた十五銭廿銭づつにて入るなり。」

ここには、伊勢与市がわずか永楽一銭(当時の対価で100円ほど)の入場料で銭湯を開いたため、人々は珍しがって入りに行った。しかし風呂にはまだ不慣れで、熱がったり、煙や水蒸気で鼻も口も自由にならないと言う人も多かったが、(僅かニ十数年後の)今は風呂屋は町ごとにあり、入浴料も何倍にも跳ね上がるほどの人気と広がりを見せた、ということが書かれています。

ちょうどこの時期は徳川家康の江戸入定における城下町造成工事がピークを迎え、街中は砂ぼこりが立ち、また地方からの肉体労働者も多く、彼らの身体の汚れや疲れをとるニーズが合致したというわけです。このように江戸時代初期において急激な広がりを見せた銭湯は、その後も人々にとって生活を支える重要な産業であり続けました。その背景には、火事に対する防災面と、お風呂を沸かす際の大量の薪と水へのコストの観点から、大身(身分が高い)の武家以外、たとえば裕福な商家であっても、内風呂を持つことは基本的になかったことがあります。このため庶民は銭湯を利用し続け、江戸時代も末期ころの文化年間(1804〜1818年)には江戸全体で600軒以上もの銭湯があったとの記録が残されています。

特に市街地において家庭風呂が普及するのは、明治維新を通かに過ぎて昭和30年台の高度成長期を待たねばならず、銭湯はそれまで人々の生活を支え統けたのです。

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